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おまけ

『奇跡の街の聖先生』

 

「聖先生!」

「どうしたんだね、看護婦くん」

「重病患者の美坂さんが、また病室を抜け出しました!」

 

がくっ

 

「ええいっ!首に縄をつけてでも寝かしておけと言っただろう!」

「それが……どうやったのか、縄をするりと抜けて…病室の窓から……」

「あいつ、ほんとに病人なのか?!余命幾ばくもない体なのかっ?!」

「謎ですね」

「大変です!聖先生!」

「なんだ?看護婦Bくん」

「入院していた沢渡さんが……消えました!」

「…逃げたのか、そいつも」

「ち、ち、ちがいます!なんか検温してる最中にふうって、薄くなって消えたんです!」

「んなばかなことがあるかっ!」

「ほ、ほんとですよ!あたし、正直、怖くて泣きそうです!」

「……」

「先生、急患です!」

「む、そうか。とりあえず、その消えた患者のことは後回しだ!」

「は、はい!」

 

…。

……。

………。

 

「急患はこの倉田さんです!」

「なんだ、この傷は…?およそ動物や人間のつける傷ではない…

 化け物にでもやられたかのような…」

「先生!また急患です!」

「なに?!」

「自らの腹部を剣で一刺しにしています!」

「せ、切腹っ?!なんで女子高生がんなことをっ?!」

「あ、あれ?先生?!」

「き、傷が治っていく?!」

「先生!トラックに弾かれた主婦が!」

「だーっ!なんでこんな短期間に次々と!」

「先生!」

「今度は何だぁっ!」

「7年意識不明だった月宮さんが、いきなり目を覚ましました!

 なんか『たい焼き食べたい』とか言ってます!」

「あああああああああああっ!!もおっ!!非常識な患者はお断りだっ!

 もういい、帰るっ!私は国に帰るぞっ!!」

「ああ、先生ーっ!」

 

 

 

「医者が暇なのは、皆が健康ということだ。いいこととは思わないか?」

「……?」